台湾から近い香港についても少し紹介していきたいと思います。香港は日本から飛行機で約4時間、1997年に中国に返還されてから中国色が濃くなっていますが、それでも日本人にはショッピングやグルメで人気のある旅行先です。
旅先では何かと散財しがちですが、ここ数年は毎年のように物価があがり、ブランド品などの購入は日本とあまり大差がありません。買い物好きの日本人にはちょっと耳の痛い話ですが、実はもっと打撃を受けているのは香港に住む一般人ってご存知ですが?
今回は彼らのお財布事情をご紹介します。
お財布事情を知る前に、まずお給料の水準を見てみましょう。香港人の大卒の場合、初任給は10,000香港ドル(約15万円)前後、弁護士や医師などの専門職はもう少し高額になります。
またパートタイムの場合、最低賃金の時給は34.5香港ドル(約520円)です。週5日、1日8時間勤務のフリーターの場合、月収は約6,000香港ドル(約9万円)になります。金額だけ見ると日本とあまりかわらない印象を受けますが、これらのお給料で生活するのは非常に厳しいです。まず一人暮らしはできません。
まず一番頭を悩ませる出費は住居費です。
2000年以降、中国本土の富裕層が投資目的で香港の新築マンションを買いあさり、不動産が高騰。もともと土地が狭い上に、供給数が限られている賃貸も需要に追い付かず高騰した結果、香港の郊外でも10,000香港ドルだして賃貸物件が見つかるか、難しいところです。大卒で一人暮らしをするのはまず無理でしょう。
実家暮らしでも、実家が持ち家か、政府住宅(日本の公営住宅に該当し、家賃は年収による)ならば問題ありませんが、賃貸となると家族数人の働きで支える必要があります。
香港の賃貸は通常2年契約ですが、契約更新の際、20-30%以上の値上げを要求されるのは珍しくありません。
住居費の次に大きい出費は両親への出費でしょう。
香港では日本の年金に該当するMPF(強制性公積金)が2000年に始まり、個人の給料の5%、会社からも同額を毎月積み立て、65歳から受給できます。
今の現役組はこれで問題ありませんが、すでにリタイアしている年代の人にはこの制度はなかったため、老後の資金は現役時代に自分で蓄えるか、子供に資金面で頼るしかありません。よほどの富裕層でない限り、香港人にとって親への仕送りや同居して生活費の大半を面倒みることは珍しいことではありません。
近年の家賃相場の高騰もあり、子供世帯が独立しながら、両親への仕送りや生活費を負担することが難しいので、結婚しても夫婦どちらかの両親を同居しているケースはよくあります。
以上の背景を踏まえながら、香港人夫婦が賃貸で2人暮らした場合の1か月の出費を試算してみます。
住居費 | 10,000香港ドル |
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食費 | 3,500香港ドル (朝と夜は自炊、昼はそれぞれ1回/50ドルの外食と想定) |
日用品 | 500香港ドル |
水道代 | 50香港ドル (4か月に1度の請求を月割りで試算) |
電気代 | 700香港ドル (夏場は冷房を使うので高額になりがち) |
合計 | 14,750香港ドル |
上記金額が生活にかかる最低金額の目安です。
その他に医療保険(香港には日本のような健康保険制度はないので、医療費はすべて自己負担のため、個人で何らかの医療保険に加入しています。会社が福利厚生の一環として加入する場合もある)、両親への資金援助、衣服費、交際費などがありますが、個人によって額に幅があるでしょう。
香港人のお財布事情、意外とシビアだったのではないでしょうか?
香港はイギリスの植民地から中国へ返還という流れから、個人への社会的援助が日本より手薄でした。こういった背景から香港人は少しても資産があれば、投資に回します。個人で株に投資したり、割のいい保険を買ったり。国民性の違いですが、日本人はどちらかというと貯蓄派が大変ではないでしょうか?