みなさんは『高嶺の花子さん』という曲をご存知でしょうか?同曲は2013年、ボーカル兼ギター、ベース、ドラムからなるスリーピースバンドの“back number”によって発売されました。
「手の届かないような素敵な片思いの相手が、ある日突然何かの魔法がかかったみたいに自分の所へ落ちてきやしないだろうか」
なんて、誰もが一度は経験したことのあるような一方通行の恋心を、ペンタトニックスケールで始まるなんだかソワソワした音階のメロディにのせて歌っている曲です。
この曲のMVを見てみると、まず冒頭部分に赤、青、緑の旗が道の上部にいっぱいに吊るされている風景が映ります。
この風景は実は、台北のとある通りで見ることができます。
台北MRTのオレンジライン(中和新蘆線)とグリーンライン(松山新店線)の交わる松江南京駅付近に「四平陽光商圏」というところがあるのですが、その四平陽光商圏の中に、この旗のぶら下がった通りがあるのです。
この通りの名前は四平街ですが、別名女人街とも呼ばれていて、女の人向けの商品を扱っているお店がたくさん軒を連ねています。
さて、今回ご紹介するカフェも、そんな四平陽光商圏エリアの一角に位置しています。
カフェの名前は「里山咖啡」。
「里山」は「リィシャン」と読むのかと思いきや、お店のWiFiを借りたところ名前が「satoyama」となっていて、日本語かよ!と思わずツッコミを入れてしまいました(これにはきちんと由来がありました)。
今回は、
と今回は里山咖啡の魅力について色々お話をさせて頂きたいと思います。
ではまず、里山咖啡でどんなメニューを楽しむことができるのかというお話から。
里山”咖啡”というくらいですから、こちらのお店ではもちろん、コーヒーを楽しむことができます。
アメリカンから始まり、ラテ、カプチーノ、マキアート……など、色々な飲み方でコーヒーを楽しむことができます。ベイリーズラテやコアントローラテなど、アルコールを含ませたフレーバーコーヒーもありますよ。コーヒーにアルコールを垂らすって、オシャンティな飲み方ですよね。
コーヒーだけではなく、お茶類も扱っています。こちらは花草茶の中の「生命」という種類のお茶。茶葉の中にミントが入っており、スッキリした味わいです。ポットのお茶の他、ミルクティーやラテなんかもあります。
飲み物のほかには、軽食やケーキ扱っています。ちょっと小腹がすいたという時にどうぞ!
里山咖啡でもうひとつおすすめなのが、こちらのお店で取り扱っているビールです。
上の写真の右側のビールは「大暑」という名前のジャスミン茶の香りのするIPAビールと、中央には「Bourbon Barrel Aged Imperial Porter」という名前のバーボンウィスキーを醸造した樽で熟成したポーター黒ビール。
どちらも台湾各地で製造している、台湾地ビールです。
左側にバナナのイラストが書いてある瓶のみ麦汁とバナナを原料としていて、アルコールは入っていません。もちろんこちらも台湾製造です。これらの他にも、色々なフレーバーのビールがあります。
本当ビールは「大暑」のみ注文したのですが、オーナーさんが「Bourbon Barrel Aged Imperial Porter」をサービスで提供してくださいました。
この日は昼に里山咖啡を訪れたので、昼間っからビールの棚の前できゃっきゃしている日本人を見たオーナーさんが、「日本人はよっぽどビールが好きなんだな」と思ってサービスして下さったものと思われます。
オーナーさん、どうもありがとうございました!
さて、里山咖啡で楽しむことができるメニューをご紹介いたしましたが、実はもうひとつ、私が里山咖啡へ行く時に楽しみにしているものがあります。
里山咖啡の店内に書かれている黒板アートです。
里山咖啡の店内に入ってすぐ右側に、大きな黒板があります。
黒板には黒板らしく、チョークで絵が書かれています。
絵の題材は様々で、昔の記録などをみるとお店のメニューなどが書かれていたこともあったようですが、最近は台湾の社会問題や歴史、政治に関するテーマで絵が描かれていることが多い模様です。
2019年の6月に訪れた時は、上の写真のようなイラストが書かれていました。
「台湾黑名單」は日本語にすると「台湾ブラックリスト」となります。
台湾でブラックリストというと、特に国民党政府が台湾に来て以降、台湾独立や共産主義への反対を唱えた人を政治的な危険分子として旅券を剥奪する等の措置を行ったものを指します。この措置は戒厳令が解除されてのち、1992年にブラックリストが解除されるまで続きました。
つまりこの黒板アートは白色テロ時代に起こったことをテーマとして扱っているということになる訳ですが、そんなテーマの絵がいつ描かれたのかというと、今年の2月28日だそうです。
どういったタイミングで絵が変わるかというのは不定期だそうですが、毎年2月28日には必ず新しい絵に描き換えるとのことでした(2月28日は二・二八事件が発生した日付です)。
この黒板アートが新しくなる度に、台湾について学ぶ機会を与えていただいております。
上記のようなことから里山咖啡が理念を持って営業していることがわかりますが、里山咖啡の特徴はそれだけに留まりません。
台湾といえば2019年5月にアジアで初めて同性婚に関する法が成立しましたが、そうしたLGBTの権利に関する活動を行っていたり、その他にも様々な分野に関する公演を行ったりしています。
こうして一定の理念をもって活動するという考え方は、里山咖啡の屋号にも反映されています。
そう、里山を“satoyama”と読む所以です。
里山咖啡のsatoyamaは「里山イニシアティブ」の里山から取られています。
では「里山イニシアティブ」とは一体何なのかというと、日本の環境省のホームページに、その答えを見つけることが出来ました。
曰く「地域の持つポテンシャルに応じた自然資源の持続可能な管理・利用のための共通理念を構築し、世界各地の自然共生社会の実現に活かしていく取り組み」とのこと。
農林水産業などある程度人間の影響を受けつつ維持されてきた自然環境を里地・里山と定義し、そこに住む生物の多様性を保ちながら人の福利も追求していくというのがこの取り組みの主要な目的となっているようです。
恥ずかしながら私は、今回こちらの記事を書くまで、日本の環境省がこうした取り組みを行っていることを全く知りませんでした。
里山咖啡の「里山」がどうして「Satoyama」と読むのかを調べるにあたりやっと「里山イニシアティブ」という取り組みについても知ったのですが、今まで知らなかったことを知ることができたとともに、自国のことについてもまだまだ勉強しなければならないのだ実感しました。
里山や里山イニシアティブ、その他日本のいろいろなことについて台湾人に聞かれたときに、なるべく恥ずかしい思いをしないようにしたいものです。
最後に、里山咖啡への行き方について記載させていただきます。
里山咖啡は松江南京駅の近くに位置しています。松江南京駅で電車を降りたら、まずは6番出口を目指してください。
地上に出たら出口とは反対側にひとつ、四平街方面に入ることができる曲がり角がありますので、その角を曲がります。
曲がったらさらに最初の角を右に曲がり、すこし歩くとすぐに、里山咖啡の入口があります。四平街の観光と併せて、ぜひ訪れて見てくださいね。
住所 | 台北市中山區伊通街66巷17號(Map) |
営業 | 11:00~21:00 |
https://www.facebook.com/STYMCafe/ |