台湾司法博物館は旧の台南地方裁判所のことで、この裁判所を改造し台湾司法博物館としてリニューアルオープンしたものです。
台湾司法博物館は1991年に国定古跡に指定されました。台湾司法博物館は建築内容が素晴らしいため、台湾三大古典建築の一つに数えられています。台湾司法博物館の建築要素で特に目を引くのがドーム、柱、天井、装飾などです。
台湾司法博物館の全体の構造は外から見ただけではつかみにくいですが、館内に展示した模型を見ると建物全体、特にドームの構造がよくわかります。
また柱では入り口に建てられた8本の柱が目を引きます。様式はイオニア式と複合式を取り入れたものです。館内にもたくさんの装飾を施した柱が建てられており、荘厳な雰囲気が漂います。また天井はどこも高く、芸術性の高い模様が施されています。天井からぶら下がった照明類もユニークで見ごたえがあります。
台湾司法博物館を見学するときは「光の廊下」と呼ばれる廊下を通って館の奥に進んで行きますが、この廊下の両側には部屋が作られているため窓がありません。そのため廊下の天井には天窓がいくつか作られ、そこから明るい光が差し込んできます。天窓は高い屋根を貫くように作られており、館内にはその天窓の構造を解説する資料が展示されています。
台湾司法博物館の屋根の一部は、マンサード屋根になっています。マンサード屋根は5角形のフレームが特徴的な屋根構造です。
台湾司法博物館では実際に高みまで登ってこの屋根の構造を見学することができます。マンサード屋根内には猫道と呼ばれる作業者用の通路があり、そこを渡りながらドーマーという丸い窓から外の風景を見ることができます。
建物内には、建物の構造を紹介する部屋もあって、そこでは釘を使わない木材の組立などの見学が可能です。
台湾司法博物館には一般展示室と特別展示室があります。一般展示室には日本語で書かれた資料も数多く展示されています。
また特別展示室では半年に1回、展示内容が変わります。これまでに、二・二・八事件で処刑された王育霖検察官に関する資料などの展示会が開かれました。
台湾司法博物館の前身である台南地方法院は、日本統治時代に総督府の建築技師を務めていた森山松之助(一説には小野木孝治)が設計し1914年に完成したものです。
当時台湾では総督府により、「台湾總督府法院職制」が制定されましたが、台南地方法院ができる前までは、台湾には法院(裁判所)が台北と台中の2か所にしかありませんでした。
台湾司法博物館では、台南地方法院時代に数多くの裁判が行われましたが、その中でも有名なのが1915年に起きた余清芳による西來庵(せいらいあん)事件の裁判です。
事件を起こした余清芳は元々、台湾総督府の警察管でした。後に警察官をやめ西來庵という宗教団体に加入し布教活動をするようになりました。そしてその宗教団体を母体として抗日武装蜂起を計画しました。
ところが計画が実行前に発覚してしまったため、余清芳はゲリラ戦に切り替えました。このゲリラ戦では95人の日本人が殺され1900人以上が検挙されました。検挙に伴い台南地方法院で裁判が開かれ、95人が死刑に処せられました。
台湾司法博物館にはその他、かつての留置所や検察室などが保存され、実際に入って見ることができます。
留置所はドームの奥の方にあり、奥行きが深く幅の狭い部屋が4つ作られています。各部屋は灰色の壁で仕切られていますが、この壁には拘束された人たちによる落書きがたくさん書かれています。
また、検察室も昔のままの状態で保存されており、この部屋に入ると当時の検察の様子などを思い描くことができます。
住所 | 台南市府前路一段307号 |
営業時間 | 9:00-17:00 |
休業日 | 月曜日、祝祭日 |
料金 | 入場料無料 |
アクセス | 台鉄「台南」駅からタクシーで約10分。 |